福祉施設内でのトラブルを未然に防ぐための3つの要因とチェックリスト

たくさんの人と接触する施設において、トラブル・事故はつきものであると同時に避けることが難しいものでもあります。しかし、どんなケースにも必ず原因と予兆があり、再発を防止することができます。そこで、重要なのはリスクをよく分析することです。

ここでは、トラブル・事故が起きた時の対応方法やリスクについて解説しています。ぜひ、参考にしてみてください。

利用者同士のトラブル

 

 

施設での寂しさやストレスから他の利用者に対して攻撃的になってしまう利用者もおり、トラブルが生じることがあります。

言い合いのようなけんかから傷害事件に発展してしまうケースもあるため、注意が必要です。

そこで、今からでもできる4つの解決策を紹介します。

 

 

①物理的に空間を隔てる

 

部屋や食事のテーブルの配置を変えてみるのも解決策の一つです。

この時、「あなたが二度と不快な思いをしないようにするための移動です」としっかり説明してから行いましょう。そうでないと、「相手が悪いのに、なぜ自分が移動しなければならないのか」と不快感を与えてしまいかねません。また、認知症の方は住み慣れた空間が変わると混乱し周辺症状が激しくなることもあるため、極力移動の対象とならないように配慮しましょう。

利用者同士が危害を加え合うほど関係が悪化している場合にはこの方法が効果的です。

 

 

②攻撃的な方と信頼関係を築いた上でアドバイスする

 

仲が良いスタッフからのアドバイスであれば耳を傾けてくれたり、考え方を変えてくれたりする場合もあります。

これはトラブル発生後でも非常に有効な手段です。日頃から積極的に利用者と信頼関係を構築し、事態が大事になる前に介入できる状態を作っておくことが大切です。

 

 

③スタッフとのミーティングで話す

 

他のスタッフと情報交換することで、トラブルの原因や利用者の性格を把握しやすくなります。また、問題を共有することでより良い解決策を編み出すこともできます。

 

 

④生活相談員やケアマネジャーに相談する

 

現場だけでは解決できそうにないケースは、生活相談員やケアマネージャーに相談してみましょう。

トラブルの原因が病気の症状である場合には薬の調整が必要になることもあり、もちろん医療機関との連携も必要になります。医療機関や家族とのスケジュール調整には、生活相談員やケアマネジャーの存在が大切です。

 

 

利用者やその家族からのクレーム

 

忙しい現場では中途半端に対応してしまいがちです。そのため、苦情処理専門の部署を作り、そこで対応するようにしましょう。そうすることで、対応が楽になるだけでなくクレームを向ける先が明確になるというメリットがあります。また、苦情処理専門スタッフと利用者側が直接コミュニケーションをとることで不信感が軽減され、事故発生時における訴訟などへの発展を防ぐことができます。

さらに、ここで知っておくべきなのは「ハインリッヒの法則」です。ハインリッヒの法則とは、あらゆる業界で事故防止のために活用されている理論で、「生命などにかかわる重大事故が1件発生した場合、その背景には29件の軽い事故があり、さらにその背景には300件ものヒヤリとした出来事がある」という理論です。つまり、どんなに小さな問題でも重大な事故へと発展する可能性があるということです。

苦情処理専門の部署では小さなクレームも慎重に扱い、リスクを分析し事故防止につなげることが大切です。また今後の防止策を含めて利用者に説明することで信頼にもつながります。

介護中の事故

 

 

介護現場で事故が発生した場合、事業者や施設はその詳細を市町村に届け出ることが義務づけられています。市町村に報告された事故の例には、以下のようなものがあります。

 

 

・転倒

例:歩行中に転倒してしまった、座位を保てず転倒してしまった

・転落

例:車いすやベッドから転倒してしまった

・誤嚥・誤飲

例:飲食物や唾液を誤飲した

・介護ミス

例:おむつ交換時に骨折させてしまった、利用者の表皮を傷つけてしまった

・食中毒・感染症

例:ノロウイルス、インフルエンザ

 

 

要介護の高齢者は心身の状態が衰えているため、常に多くの事故リスクを抱えています。事故防止の基本は、リスクをきちんと把握し適切な支援計画に結び付けていくことです。

ただし、「リスクがあるから、利用者の生活行為を制御する」という発想は、利用者の尊厳を侵すことにつながります。また、誰でも制御されると抵抗しようとする力が働きます。それがかえって予測不可能な行動を生み、新たな事故を招く恐れがあります。実際に、車いすからの転倒を防ぐため利用者をY字ベルトで固定したところ、そこから逃れようと身体をずらしたり動いたりして車いすごと転倒したケースもあります。その他にも、認知症の方の行動を力づくで制御した結果、信頼関係が崩れて周辺症状を激しくさせてしまったというケースも現場ではよく見られます。

 

 

なぜ事故が起きるのか

 

事故に結びつく要因は3つあります。これらを考慮しながら日々のケースを検討し、事故が起こらないシステムを作りましょう。

 

 

①利用者本人に潜むリスク

 

利用者の疾患やADL(日常生活動作)といった身体状況だけに目を向けていると、「身体上のリスクを軽減するには、行動の制御が必要である」という本人の尊厳を無視した間違ったケアが生じてしまいがちです。そして、そのようなケアからは新たなリスクが生じることもあります。そうならないために、利用者の精神状況や生活歴、そこから形成されている価値観・人生観なども理解しましょう。

 

 

②支援者側に潜むリスク

 

スタッフの体調や心の状態が良くなければ、集中力が低下し事故につながります。家族も同じで、身体的・精神的に疲労していれば、虐待など様々なトラブルのもとになります。

支援者側の態度が利用者側の心理などにも影響し、さらにリスクが高まることもあります。

また、慣れや油断もリスクの一つです。

 

 

③環境に潜むリスク

 

「段差につまずき転倒した」「福祉用具が身体に合わず事故が生じた」という事例もあります。ここで注意すべきなのは、環境に潜むリスクは改善したと思っても様々な要因が絡むことで再び事故が起こる可能性があるということです。利用者や支援者の状況に合わせて環境整備することが重要です。

 

 

事故が起こったら

 

事故について管理者に報告し、事故報告書に状況を記録することが基本です。この時、事故報告書には最低限必要な項目として、利用者と担当者の氏名や発生日時、場所、環境、具体的な状況といった基本情報の他に、どのように対処を行ったかや本人のリスク状況についても記録し、後から見直した時に分かるようにましょう。そうすることで再発防止の取り組みが行いやすくなります。

 

 

事前にしておくべきこと

 

その場での対処法や何をもって事故報告の要件とするか、処理の手順をどのように踏むべきか、事故ケースの検討会や家族などへの状況報告をどのように行うかをマニュアル化しておくことが大切です。また、事故を想定した訓練・研修を行い、いざという時にもスムーズに対応できるようにしておきましょう。

 

チェックリスト

いざという時に対応できる状態にあるかチェックしてみましょう。

 

 

・スタッフが救急法の訓練を受けている。

・定期的に救急用品の中身を点検している。

・緊急時の避難方法・経路をスタッフ間で確認している。  

・緊急時の役割分担を把握している。

・定期的に緊急通報訓練を行っている。

・通報先の一覧表が作成してある。

・病院の専門科目・連絡先・休診療日を把握している。

・確実に利用者の家族に連絡が取れるようにしている。

・業者のリストが全て整っている。

・保険や見舞金の適用基準を十分理解している。

・事故記録の記入内容を十分理解している。

 

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