スクールカウンセラーとは?基本的な職業情報から就職関連まで

スクールカウンセラーは教育の専門性を持っている教員とは異なり、臨床心理の専門性を持っています。また、学校外という「外部性」を持った専門家として、児童生徒と教職員とは別の枠組みであるため、「スクールカウンセラーならば心を許して相談できる」といった雰囲気を作り出している点が特徴です。

 

【スクールカウンセラーの概要】

スクールカウンセラーとは、不登校や校内暴力などへの対処法として、文部科学省が全国の小中高校へ積極的に配置している心理学の専門相談員です。現在、日本には15,000校以上の学校にスクールカウンセラーが配置されており、重要度が高まってきています。今後もさらなる活躍が期待できる職業です。

 

【スクールカウンセラーの役割】

スクールカウンセラーは児童生徒の相談にあたるだけでなく、教職員や保護者に対する助言や援助、各専門機関と調整して連携を取っていくことなども求められます。そのため、スクールカウンセラーには心理カウンセラーとしての相談能力に加えて、保護者や関係機関と連携を取っていく実務的な能力も必要です。

 

児童生徒の相談内容は、不登校に関することが最も多いほか、いじめ、友人関係、親子関係、学習関係など多岐にわたっており、近年は、発達障害、精神疾患、リストカット等の自傷やその他の問題行動など多様な相談に対応する必要があります。

また、様々な課題に直面する学校現場でストレスを抱える教職員も多く、精神性疾患による休職者数は増加傾向にあります。教員のストレスは職場内におけるものに起因する割合が高く、こうした教職員のメンタルヘルスの向上も期待されています。

 

主な役割は以下の通りです。

 

①児童生徒に対する相談・助言

②保護者や教職員に対する相談(カウンセリング、コンサルテーション)

③校内会議等への参加

④教職員や児童生徒への研修や講話

⑤相談者への心理的な見立てや対応

⑥ストレスチェックやストレスマネジメント等の予防的対応

⑦事件・事故等の緊急対応における被害児童生徒の心のケア

 

【スクールカウンセラーの実態】

スクールカウンセラーの特徴として、非常勤であることや時給の高さがあげられます。しかし、夏休みや春休みといった長期休暇の間は稼げないことやボーナスなどの手当てがないことに注意が必要です。

 

・給料

非常勤であることから時給制がほとんどであり、時給3,000円~5,000円が相場です。持っている資格によっては、時給5,000円~6,000円になることもあります。

専門性が高いことや責任の大きい仕事であることが時給にも反映されていると考えられます。

地域の学校をいくつか掛け持ちして担当しているようなスクールカウンセラーや、私立の学校で時給が高いところに勤めているスクールカウンセラーの場合は、月30万円以上稼ぐことも難しくありません。しかし、あまり仕事がない場合は月15万円に届かないこともあります。

ボーナスや住宅補助などの手当てもないため、年収はそれほど高くはありません。

ただし、精神科医や大学教授が通常の仕事の合間に週に1日スクールカウンセラーとして働いている場合は、本職の給料が高いため年収もそれなりの金額になります。

 

・勤務体制

スクールカウンセラーは非常勤職員であり、相談体制は1校あたり平均週1回、4~8時間といった学校がほとんどです。また、学校によっては相談を受け付ける時間を「午前中だけ」「午後だけ」などと指定していることもあります。

そのため、学校をいくつか掛け持ちしたり、専門学校等の非常勤講師と掛け持ちしたりしながら働く方が多いです。スクールカウンセラーだけで生活することは難しく、資格を取得して他の心理カウンセリングの仕事と掛け持ちするのが一般的となっています。

 

・休日

基本的に学校のスケジュールに合わせて働くことになるので、土日や長期休暇が休みになります。仕事の担当案件が少ないスクールカウンセラーの場合は、平日にも休みが入ることもあります。

 

・適性

①気持ちに寄り添うことができる

穏やかな表情や的確なタイミングでの相槌、頼もしい助言ができることなど、児童生徒の気持ちに寄り添ってじっくり話を聞くことができる方が適任です。

②正義感がある

守秘義務を守り、他人の信頼を裏切らない正義感を持っていることが求められます。

③倫理的な考え方ができる

様々な問題に対する解決策を一緒に考える職業となるため、感情に任せずに論理的な思考ができることが大切です。

④今の時代ならではの子どもたちの悩みをよく理解すること

子どもでも一人一台の携帯電話やスマートフォンを持っているのが珍しくない時代となり、SNS上でのいじめも存在します。現代社会の状況をよく理解することも必要です。

 

・やりがい

子どもたちから「友達と仲直りができた」「進路の目標ができた」という前向きな報告を聞くことができた時は本当に嬉しい瞬間であり、やりがいを感じます。悩みや問題を乗り越えてたくましく成長していく子どもたちの姿を見守ることができるのは、スクールカウンセラーの特権です。

 

・大変さ

子どものSOSに的確に対処することができなければ、最悪の場合、命を落としてしまうこともあるため、責任感やプレッシャーを背負いながら仕事しなければなりません。子どもの命を守るという非常に重要な役割を担っているからこそ、このような大変さがあります。

 

・転職

スクールカウンセラーという仕事に憧れて、転職を目指す人もいるでしょう。

しかし、前職の内容によって転職へのハードルが大きく変わります。

というのも、スクールカウンセラーとして働いている方は臨床心理士や精神科医、学教員など、いずれにしても心理学の専門の知識がある人ばかりです。すでに「臨床心理士として児童相談所で働いている」という方や「精神科の医師として病院で働いている」という方がスクールカウンセラーを目指すのであれば、高い確率で転職することが可能です。しかし、「サラリーマンだけどスクールカウンセラーに転職したい」「主婦だけどスクールカウンセラーの仕事に挑戦したい」という人の場合は、転職までの道のりは決して楽ではありません。

また、転職するにあたって、スクールカウンセラーとして働いている人の多くが非常勤職員という待遇であり、仕事を掛け持ちしなければ生活が成り立たないという場合があることに注意が必要です。

 

・求人

ハローワークに求人情報が出ている場合もありますが、より確実なのは各都道府県の教育委員会のHPをこまめにチェックすることでしょう。勤務先が学校であるため、教育委員会の管轄となります。時給や仕事量をチェックして、生活が成り立つような収入になるのかどうかをよく検討してから応募することが大切です。地域や年度によっては求人の募集がないこともあるため、こまめに情報収集をしてチャンスを逃がさずに積極的に行動する必要があります。大体は秋から冬にかけての時期に、次年度の求人募集が掲載されます。

 

【スクールカウンセラーになるには】

臨床心理士、精神科医、大学教員の資格が必要です。このような仕事に就いていないと働くことが絶対にできないというわけではないですが、実際の採用現場では、精神科医や臨床心理士などの有資格者が優遇されます。実際、スクールカウンセラーの8割以上が臨床心理士です。

 

臨床心理士になるには、臨床心理士養成に関して学ぶことができる指定大学院・専門職大学院で勉強して受験資格を取得したのちに、日本臨床心理士資格認定協会の資格試験に合格しなければなりません。

日本臨床心理士資格認定協会のHP(http://fjcbcp.or.jp/rinshou/juken/)に、指定大学院・専門職大学院とされている学校のリストがあるので、臨床心理士を目指す方はチェックしてみると良いでしょう。

少なくとも大学院で2年学びさらに試験に合格する必要があるため、簡単に習得できる資格ではありません。

 

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