介護士なら知っておくべき基本的な7つの体位
同一体位の持続は褥瘡や変形、拘縮、苦痛など身体的にも精神的にも悪影響があります。
それらを予防するためには体位交換が必要であり、尚且つ楽な姿勢でなくてはなりません。
ここでは、利用者にとって楽な体位の実践について解説しています。
【7つの楽な体位の実践】
体位交換は2時間に1回程度行いましょう。また、体位交換を行う時は必ず利用者に声をかけましょう。
<仰臥位>
仰向けのことです。一般的にはこの姿勢が一番楽と言われていますが、自分で寝返りをうてない利用者によっては、血行が悪くなり褥瘡の原因にもなります。身体の曲り具合に合わせて枕や座布団、ムートン、タオルなどで血液循環の悪化や褥瘡を予防しましょう。
・頭部:利用者の好みの枕が良いですが、高すぎると首に負担がかかってしまいます。肩の厚みと同じくらいの高さの枕を使用しましょう。
・腕:体から少し離し、ゆっくりと伸ばします。この時、手のひらは下に向けます。
・腰部:必要に応じてムートンを入れましょう。
・膝下:ビーズ枕か二つ折りにした座布団を入れましょう。膝と膝の間は拳一つ分くらい空けます。
・踵部:下腿部全体が浮くようにします。
・足底部:足関節が直角になるように枕か座布団を当てましょう。こうすることで、尖足(足関節が底側に屈曲し、歩行や座位が不自由になること)を予防できます。
<側臥位>
横向きの姿勢のことです。麻痺のある利用者には、麻痺側を下にしないようにしましょう。下にした場合は短時間で戻しましょう。
・頭部:枕は仰臥位の時よりも高めにします。そのため、枕の高さは肩の分くらいは必要になります。
・腕:軽く曲げ、楽にします。
・腰部:少し後ろに引き、基底面積を広くとりましょう。こうすることで、安定します。
・下肢:足と足の間に薄い枕かクッションをはさみます。
・胴部:枕を抱くように軽く当てましょう。
<腹臥位>
うつ伏せのことです。
・頭部:呼吸しやすいように横向きにします。
・胸部:圧迫感があれば、腹部に小さい枕を敷きましょう。
・背:頭部と一直線になるようにします。
・上肢:ひじ関節を軽く曲げ、両手を顔の横に置きます。
<半座位(ファーラー位)>
上半身を45°程度上げた姿勢のことです。この姿勢をとる時はバックレストやギャッチベッドなど背もたれを利用します。
・頭部:枕は少し低くします。
・上肢:枕を肘の下に当て肘を少し曲げた状態にし、上半身が傾かないように維持します。
・下肢:身体がずり落ちる場合は、クッションを当てましょう。
・膝部:膝を曲げ、ビーズ枕を入れましょう。
・背:上半身を45°程度に拳上します。
・足底部:座布団か枕を当て足関節を直角にし、尖足を予防しましょう。
<端座位>
ベッドの横に足を下ろして座る姿勢のことです。
・膝部:ベッドの端に膝関節がくるように腰をおろします。
・背:後ろに倒れないように、布団や枕を当てましょう。
・足底部:必ず足が床に着くようにします。あらかじめベッドの高さを調節しておきましょう。
<椅座位>
イスに深く座る姿勢のことです。股関節・膝関節・足関節が直角になるように座ると仙骨部や踵に負担がかからないため、褥瘡の予防になります。
・上肢:軽く曲げ、膝の上に置きましょう。
・足底部:必ず足が床に着くようにします。
<起座位>
背中を直角になるように起こし、オーバーテーブルの上に置いた枕などにもたれる姿勢のことです。喘息や心臓疾患の発作が起きた場合、側臥位になるより起座位になる方が楽であるといわれています。
・背:ギャッチアップするか上半身を起こし、バックレストや座椅子、布団などで支えます。
・胸部:オーバーテーブルに枕を置き、もたれさせます。布団を丸めて抱えても良いでしょう。
・膝下:枕かクッションを当てます。
・足底部:足関節の下に枕を当てます。
【実践のポイント・注意点】
ここでは、より良い体位交換を行うためのポイント・注意点を紹介しています。
利用者だけでなく介護者にも負担がかからないようにすることが重要です。
①ボディメカニクスを活用する
※ボディメカニクスとは物理や力学の原理を利用し、姿勢や動作に取り入れた介護技術のことです。これを活用することで、介護する側もされる側も力任せにならず負担がかかりません。ボディメカニクスには以下のようなポイントがあります。
ⅰ支持基底面積を広くする
ⅱ重心の位置を低くする
ⅲ利用者を水平に介護者に引きつけるように動かす
ⅳ利用者と介護者の重心を近づける
ⅴてこの原理を利用する
ⅵ利用者の身体を小さくまとめる
ⅶ大きな筋群を使う
ⅷ作業域を確保し、効率よく行う
②基底面積を広くし、安定させる
③体位交換をした後は、痛いところはないか衣類やシーツにしわがないか確認する
④原則として、麻痺側は下にしない(下にしたらすぐに戻すこと)
⑤身体の向きたい方向や枕の高さについては利用者と相談する
この記事へのコメントはありません。