統合失調症とは?症状から治療法まで徹底解説
統合失調症とは100~120人に1人が発症する(生涯有病率0.7~0.8%)とされている精神疾患です。
かつては精神分裂病と呼ばれていましたが、2002年に日本精神神経学会が正式名称を「統合失調症」と改めました。
今回は統合失調症の症状や原因、診断、治療について紹介します。
【統合失調症の症状】
統合失調症の好発期は10代~20代後半とされており、症状の特徴としては幻聴や妄想、まとまりのない発言などがあげられます。
<陽性症状>
陽性症状とは、現実にないことを認知する症状のことです。
具体的には以下のような症状があります。
・幻覚
幻覚の中でも統合失調症では幻聴が多く、はっきりとした声で聞こえてきます。
幻聴の内容は「お前は何をやってもダメだ」「〇〇しなさい」「今〇〇をしているな」など悪口や命令、批判、物音、監視しているようなことが多く、声の主も神や宇宙人、知人、正体不明の人物など様々です。
このように本人にとって否定的であったり不快であったりする内容が多いため、幻聴が自傷行為や意欲低下につながることもあります。
また幻聴にも種類があり、本人の考えが声となって聞こえてくる場合(思考化声)や幻聴同士が会話をする場合(対話性幻聴)、幻聴と本人が会話する場合(二人称幻聴)があります。
その他にも実際には存在しないものが見える幻視、実際にはしない味がする幻味、実際には触られていないのに触られているように感じる幻触などがみられることもあります。
・妄想
妄想には一次妄想と二次妄想があります。
一次妄想とは、他者からみて生じた過程が理解できない妄想のことです。
二次妄想とは、一次妄想以外の妄想のことで、他者からみて生じた過程が理解できる妄想のことです。
妄想の内容は「盗聴器が仕掛けられている、尾行されている」と感じる追跡妄想や「街に出ると皆にちらちらと見られる」と感じる注察妄想、なんとなく不気味な気分になる妄想気分、「自分は〇〇の子孫である」と思い込む妄想着想、知覚したものに特別な意味を感じる妄想知覚、周囲の全てのもの事が自分に関係していると感じる関係妄想など様々です。
・思考障害
思考がまとまらなくなり、支離滅裂な発言をします。
無意味な言葉を羅列したり思考が突然停止したりする(思考途絶)こともあります。
・自我障害
自分と他者の境界が分からなくなり、能動意識が損なわれます。
他人の考えが勝手に自分に吹き込まれると感じる思考吹入や幻聴やテレパシー、電波によって操られていると感じる作為体験、他人から干渉されていると感じる思考干渉、自分の考えが他者によって抜き取られると感じる思考奪取、自分の考えが他人に筒抜けになっていると感じる思考伝播、自分のではない考えが浮かんでくる自生思考、自分の存在に現実感を感じられなくなる離人症などがみられます。
<陰性症状>
陰性症状とは、生き生きとした感覚が低下する症状のことで、陽性症状に比べ表面化しにくいという特徴があります。
具体的には以下のような症状があります。
・感情鈍麻
感情の動きが少ない、感情が湧きにくい、共感が困難になる、関心がなくなるといった症状です。
・会話の貧困
ボキャブラリーが減ったり、会話をしていても共感に欠けるため意思の疎通が困難になったりします。
無口になることもあります。
・抑うつ
気分の落ち込みやイライラ、不眠、疲労感などがあらわれます。
急性期の陽性症状が消退すると抑うつ状態が続くこと(精神病後抑うつ)があります。
・意欲の低下
自発的に何かを行おうとする意欲が低下し、作業を続けることが困難になります。
・自閉
他者との接触を拒否し、自分の世界に閉じこもる症状です。
・病識の障害
急性期の場合は病識がないことが多いです。
しかし「調子がおかしい」「神経が過敏になっている」という病感や「幻聴をどうにかして欲しい」「辛い」という健康な自我を持っていることもあります。
判断能力が損なわれているわけではありません。
【統合失調症の病型】
統合失調症には①破瓜型統合失調症、②緊張型統合失調症、③妄想型統合失調症の3つの病型があるものの、鑑別が困難であったり経過の中で病型が変わったりすることもある。
①破瓜型統合失調症
破瓜とは漢語で16歳という意味で、破瓜型統合失調症とは思春期に発病してから月~年単位でゆっくりと進行するタイプです。
陽性症状より陰性症状の方が強くあらわれる特徴があります。
また病状増悪期(シューブ)を何回か繰り返しながら、人格が変化していきます。
②緊張型統合失調症
激しい興奮状態や昏迷状態の中で突然発病します。
急性期には陽性症状による反響言語やカタレプシー、神経運動興奮などがあらわれ、奇異な異常行動がみられることもあります。
適切な治療により数日~数週間で落ち着き、症状がなくなる場合も多いです。
③妄想型統合失調症
陰性症状や人格の変化よりも幻覚や妄想が目立つタイプです。
ゆっくりと発病し、妄想もそれほど重くなく生活の乱れや異常行動も少ないため、医療機関にかかるのが遅くなりがちです。
そのため妄想が崩せないほど体系化されること(妄想体系)があります。
【統合失調症の原因】
男女差もなく生涯有病率は0.7~0.8%であり、生物学的原因についてはいまだ定説がありません。
しかし様々な仮説がある中でも、幻聴や妄想などといった激しい症状にドーパミン遮断薬が効果的であることから、脳内神経伝達物質であるドーパミンが過剰になっているという「ドーパミン過剰仮説」が有力とされています。
その他にもセロトニンやグルタミン酸、GABAなどの神経伝達物質のバランスの崩れやストレス、脆弱性など様々な要因が絡み合って発病すると考えられています。
遺伝については一卵性双生児では発病の一致率は50%、兄弟姉妹では10%であり、遺伝的要因はあるもののそれが全ての原因というわけではなく、環境的要因も大きく関わっていることが分かっています。
また統合失調症では急性期の前に前駆期があると考えられており、明らかな陽性症状が発症する数年前から精神症状がわずかに生じているとされています。
【統合失調症の診断】
医療機関では、WHOが作成したICD-10と米国精神医学会が作成したDSM-IVが診断基準として用いられます。
診断では幻覚や妄想の有無、その内容、症状の長さ、生活にどのような支障があるかが重視されます。
また明らかに感情障害が先行している場合には、統合失調症と診断しないように定められています。
【統合失調症の治療】
統合失調症は適切な治療により再発の予防も十分に期待できる病気です。
病気と向き合い根気強く治療することが大切です。
<治療方法>
①薬物療法
発病後5年間で脳の構造的・機能的異常が悪化するため、なるべく早い段階での抗精神病薬の投与が必要です。
ここで注意すべきなのが服薬管理です。
急性期の激しい陽性症状は薬によって数日で軽減します。
そのため服薬を中止したくなりますが、不適切に中止すると1年以内の再発率は70%にもなります。
一方適切に服薬を継続した場合は、1年以内の再発率は30%ほどです。
つまり服薬遵守が重要なのです。
また本人に病識がない場合での服薬は、本人に「勝手に病気扱いされた」「ひどい薬を飲まされた」というようなトラウマや薬に対しての不信感を形成しがちであるため、より慎重に関わっていくことが求められます。
②電気けいれん療法(電気治療)
昏迷や精神運動興奮が強くあらわれている場合や自殺のリスクが高い場合など投薬が困難である場合には、左右のこめかみに100V程度の電気を数秒流す電気けいれん療法(電気治療)が用いられます。
少々乱暴そうに聞こえる治療法ですが、決してそのようなことはなく医学的にも有効な治療法の1つです。
③精神医学的リハビリテーション
精神医学的リハビリテーションに用いられる方法は、心理教育や生活技能訓練(SST)、作業療法、デイケアなど病状や生活の状態によって様々です。
<経過>
急性期には陽性症状が強くなり、その後陰性症状があらわれてくるのが典型的なパターンです。
回復に年単位の時間を要することもありますが大半は回復し、ほとんど援助がなくても生活できるようになります。
回復には十分な休息や適切な治療、生活の楽しみが欠かせません。
<予後>
以下のような場合、予後が良いことが分かっています。
・発病年齢が高い場合
・急性発症の場合
・早期に治療している場合
・発病の誘因がある場合
統合失調症は慢性化しやすい病気でもあります。
本人もその家族も自分自身を大切にしながら、時には医療チームの一員として、ともに治療に励むことでより良い予後が期待できます。
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